アクアトロン残像

  銀色の円盤に
  12の物語が刻まれた頃
  ふっと消えてしまった
  もうひとつの アクアトロン がありました

  それは とある実験室
  水槽でいっぱいの
  少しカビくさい部屋

  私はかつてその部屋で
  グッピーの恋のまなざしと
  色とりどりの衣装の秘密を探るため
  黒いカーテンの中
  光の渦をつくり
  くるくる回る
  魚のダンスを眺めていました

  薄暗い廊下
  ギーギー軋む錆びた鉄の扉

  今はなき もうひとつの アクアトロン

  その奇妙な残像が
  夕暮れのメリーゴーランドのように
  忘却に向かって
  くるくる回る

  銀色の円盤の上
  12の物語の
  永遠に続く
  光と音の渦の中で

詩・音楽:小泉やよい
大アクアトロン展にて展示 (2009年)
アルバム未収録